想い出を売る店
休日。梅雨も小休止らしく、空には太陽が輝いていた。近頃はすっかり出不精になってしまったが、せっかくなので散歩に繰り出す。
どこへ行くあてもないのは毎度のこと。とりあえず電車に乗って、いつものように立川へ。さっそくブラブラ歩いてみたが、太陽が強烈! まるで真夏! それでも気力を振り絞って、隣の国立駅までひたすら歩く。
途中、通っていた小学校近くの商店街を抜ける。店名こそ洒落たカタカナ名に変わっていたが、馴染みの肉屋が健在だったので、立ち止まって中をのぞいてみた。小学校の頃は好き嫌いが激しくて、給食のメニューの大半が食べられず、日々空腹状態。学校が退けて友人と遊ぶ合間に、ここのコロッケやメンチカツを買い食いして、何とかしのいでいた。この店の揚げ物はおかずの定番としてよく家族の食卓に並び、幼い頃から食べ慣れてきた。母親が竹の皮の包みを開くと、たちまち鼻腔をくすぐるラードと玉葱の混じった濃厚な香りが懐かしい。
店の主人は肉を加工する機械(名称がわからない)の事故で自分の腕をスライスしたか、メンチにしたかで、ある時から隻腕になっていた。私が小学生の頃は、まだ両方とも付いていた気がする。
ちょうど昼時だったので、久々に食べてみようと奥に声をかけたら、隻腕の店主ではなく若い女性が出てきた。当然ながら代替わりしたのだろう。コロッケはあったが、メンチカツは置いていなかった。もうやめてしまったのかもしれない。コロッケは100円。当時は30円くらいだった記憶が。コロッケ一個というわけにもいかず、ついでに同じ値段のヒレカツをもらう。昔みたいな竹の皮ではなく、コンビニ風に紙袋に包んでからビニールの手提げへ入れてくれた。
それから、昔遊んだ公園前の駄菓子屋兼駄玩具屋でベビースターラーメンも入手。これでかつてのフルコースが完成。今は大人なので、酒屋の自販機で発泡酒も買った。
↑ありったけの小遣いをつぎ込んだ駄菓子屋と文房具屋。今でも子供達のお金を吸い続け・・・
公園の木陰のベンチに腰を下ろし、コロッケを取り出してみた。当時と形が違う(確か整った楕円形だった)ので不安になったが、やはり味も変わっていた。油がキツイ。かつては具のジャガイモにカレー粉が練り込まれ、子供の口にも合った。肉屋のコロッケに昔の味を守る矜持を期待する方がどうかしていると思い直し、発泡酒でさっさと胃に流し込んだ。
その後、何軒か古本屋に寄り道して冷房で涼みつつ、国立駅で電車に乗って帰る。駅近くの古本屋の店番の女性が、キスリング描くところの〈モンパルナスのキキ〉みたいに髪をショートカットにしていて可愛いらしかった。目が合ってしまい、年甲斐もなくドキドキする。
また顔が日に焼けた。最近、赤ら顔をよく指摘されるのだが、何とも返答に困る。まあ、「散歩焼け」とでも言っておこうか。

















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