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ちょっとマニアックかもしれないが、『よみがえる自作朗読の世界』というCDを買った。北原白秋、坪内逍遥、与謝野晶子、室生犀星その他、国語の教科書でおなじみの明治大正の錚々たる詩人・歌人の肉声が聴ける。
実は萩原朔太郎のファンで、本人の声を聴きたくて購入。さっそく炬燵で寝転がって聴き始めたが、真ん中くらいに入っている朔太郎にたどり着く前に眠りこけてしまった。どれも昭和天皇の戦時中のラジオ放送を思わせる訥々とした口調で、催眠効果抜群。
商売柄、盆暮れ正月には縁がない。それでも大晦日と元旦だけは休みを確保した。何の予定もないのだが。
そんなこんなで寝正月の友はこの催眠CDと蜜柑、そしてシネクイントの下のフロアで開催中のウルトラマン展で買ったマグカップ。
月島の傳々という焼肉店で、F社の皆様と忘年会。ここは来年GWに当館で公開の史上初!焼肉バトルムービー『プルコギ』の協力店で、スクリーンに登場する生唾ゴックンものの焼肉を提供したところ。
映画にも出てくるエゴマの葉の漬物。草食動物を自認する私には一番美味しかった↑
この夜はF社A嬢お勧めのマッコリのビール割りをチビチビやりつつ、但馬牛のありとあらゆる部位をモリモリ食べ尽くしたわけだが、映画『プルコギ』最大の見せ場は赤肉と白肉の手に汗握る大バトル。私の場合、白肉と呼ばれるホルモン系はスーパー店頭の一串100円のモツ焼きばかりで、焼肉屋ではあまり馴染みがない。今回の秘めたる目的は、この映画で存在を知ったコプチャン(小腸)を食べること。蛇のようにトグロを巻いた小腸を、映画のように鋏でチョキチョキ切って食べてみたかった!
お目当てのコプチャン。残念ながら切ってあった↑
F社の皆様も撮影タイム↑
そして、ついにコプチャンが登場。もちろん不味くはなかったが、ハッキリ書くとブヨブヨの脂肪の塊。濃厚なミルクの味わいという触れ込みには程遠く感じられた。脂っこいものが極度に苦手な私は、たちまちグロッキー。それからはデザートを食べるのも、やっとの状態。同席のスタッフTに「ナメクジに塩」と称される始末。
家が遠い私を気遣っての早めにお開きだったが、帰途、月島駅のトイレから出られなくなった。敢えて細かい描写は避けるが。
苦悶しながら脳裏に浮かんだのは、観たばかりの映画のこと。『007 カジノ・ロワイヤル』は秘密兵器に頼らない腕力勝負の007で、マッチョな殴り合いの連続に青痣赤痣が伝染、こちらまでズキズキ痛くなった。もうひとつは『イカとクジラ』。崩壊してゆく家族の物語に、心がヒリヒリ痛んだ。
だが、もっともっと痛いのは、私が遭遇中の消化不良による腹痛に違いない。映画化はされないだろうが。
髪の毛掻きむしる悶絶のうちに時間はたちまち過ぎてゆき、日付が変わった。東京の西の果てJR青梅駅が自宅最寄の身にとって、東の果て月島駅はまさに夜空に浮かぶ月の中の島。もうじき電車はなくなる。駅も閉まって、私は容赦なく追い立てられるだろう。でも、どこへ行けば? タクシーに乗りたくても、トイレから離れられる状況ではなかった。
貧しさからくる日頃の粗食の反動なのか、ついつい宴席になると目の色を変えて喰って喰って喰って喰いまくってしまう。萎縮していた胃腸は、たちまち決壊。
ああ、神様、今宵のようなハシタナイ真似は二度といたしません! どうか、この窮地からお救いくださいませ!
私は深夜の月島駅のトイレで、まだ見たことのない天上の神に向かって涙ながらにこう祈ったのだった。
いつの間にやら、来年のカレンダーが出回る季節に。私が購入したのは、今は無き立川の映画館カレンダー。
かつて立川には、10軒もの映画館があった。当時、この街に住んでいた少年の私を誘い、そのスクリーンに映された大いなる幻影のおぼろげな記憶だけを残して、無惨にも取り壊された魔法の殿堂。
カレンダーのサブタイトルは「昭和色-立川の風景」。世間は昭和レトロブームとのこと。個人のささやかな想い出の断片まで「昭和」という年号で一括、他人との共有を強いられるみたいで、いささかウンザリ。でも、その産物としてこんな商品が手に入るのなら歓迎だ。
ああ、時空を越え、物質の壁を越えて、カレンダーの中に甦ったこれらモノクロームの映画館へ入り込み、かつて馴染んだシートに身を沈めることができたなら! わずかな時間でいい、私の周りから去って行った懐かしい人々と再び巡り会い、一緒にあのスクリーンを見上げることができたなら!

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