エル・スール
渋谷の興行組合の旅行で、各劇場の支配人やスタッフの皆様と福岡へ。
過去にも組合の旅行ではあちこち連れて行ってもらったが、九州は初めて。コースに柳川の舟めぐりが含まれていたのが、個人的にそそられたところ。
堀割が張りめぐらされた水の都・柳川は、福永武彦の小説『廃市』や大林宣彦監督によるその映画化作品で親しんでいた。機会と金銭的余裕があれば、一度は訪れてみたかった憧れの地。しかし、いざ実現したら、舟で縫っていったのはリアルな生活圏。小説や映画で想い描いた浪漫チックなイメージとの相当な落差が感じられ、少々ガッカリ。
それでも1時間強かけて4キロの水路をのんびり漂うのはオツなもの。私が乗った舟の船頭さんは、二十歳のイケメン青年。かなりのご老体に見受けられた他の船頭さんに比べて、味わいの点でいかがなものかと思ったが、なかなかどうして、かなりのエンターテイナー。巧みな話術と歌唱力、さらに個性を競い合う数々の船頭の中で彼だけしかなし得ないというダイナミックなアクション(橋下を舟が潜り抜ける際、竿を放擲して橋上へ飛び移り、絶妙なタイミングで通過した舟に飛び乗った!)で、我々を大いに沸かしてくれた。
ふと私の脳裏をかすめたのは、「このまま蒸発して、ここで船頭として暮らすのも良いかもしれない・・・」ということだった。聞けば定年を迎え、再就職先としてこの仕事を選ぶケースも多いとのこと。2ヶ月で研修期間を終え、3年で一人前らしい。体力並びに運動神経ゼロの私にも勤まるかもしれない。
同行のスタッフTは私の心の揺れを敏感に察知したらしく、「まず人前で歌えなければならないし、話もできないと」と言う。でもね、綿密に台本さえ組み立てておけば、1時間強くらい私だって場を持たせられるのでは? 遠くないであろう第二の人生に備え、前向きに「船頭生活」を考えてゆこう。
ホテルに着いて夕食を終え、恵比寿ガーデンシネマ、シネセゾン渋谷、ル・シネマ、シアターN、シネマライズ、QAXシネマ(順不同)の支配人・スタッフの皆様と那珂川沿いの屋台へ。おでんに串焼き、とんこつラーメンを食べた。この地ならではの体験だろう。団体行動は苦手なタチだが、とっても楽しい夜だった。
まもなく公開の『プルコギ』のポスターも↑
翌朝は一人で那珂川沿いを散策。福岡は大都会で、東京と同じく殺風景なビルばかり。さっぱり風情は感じられなかったが、違いは街の真ん中に大きな川が流れているところ。生憎の雨でかなり寒かったが、灰色の川面には、屋台が立ち並んだ夜の情景とは別のうら淋しい趣があった。前夜に食べ過ぎたせいで空腹を覚えず、川沿いの公園内にあった市立美術館のカフェテラスで朝食代わりにコーヒーを飲む。
その後、皆と合流して、キャナルシティ博多内のユナイテッド・シネマ、シネテリエ天神を視察。シネテリエ天神のS支配人は、このブログをご存知でした。やはり東京の情報収集に不熱心では、商売が成り立たないのであろう。もっとも目の前に現れた書き手と日記が一致いないようで、「あれって誰が書いているの? え、あなた?」と言われたが(何故か本人と文章のギャップをよく指摘される)。
それから帰りの飛行機まで時間があったので、博多駅周辺で単独行動。あてもなく歩いた。冷たい雨はやむ気配がなく、歯の根が合わぬくらい寒い。まったくと言っていいほど人通りのない街を彷徨っていると、ここは春の南国ではなく、以前に同じく組合の旅行で出向いた札幌辺りに来ている錯覚に陥った。











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