きっと全然大丈夫!
昨年12月15日の『チャプター27』初日に体調を崩してしまい、長らく寝ついてしまった。「外見こそ病弱だが、実はタフなのさ!」をウリにしてきたのだが、本人の勘違いで、やはり病弱だったようだ。
病院を転々としたが、一向に治らなかった。ホームタウン青梅で建物が一番ゴージャスな市立病院で診てもらったら、即刻の入院を言いつけられた。
だが、映画館という職場はシフト制で、1名が欠勤すれば、それだけ他の者に負担が。しかも入院となると長期だ。誰の邪魔にも迷惑にもならぬよう、小さく小さく生きてきた私のような男には、耐え難い状況ではないか。しかも入院はタダではない!
医者に2日間の猶予をもらい、布団の中で大人しくしていたが、症状は悪化するばかり。案の定、2日後の診断で入院以外に残された道がないと追い詰められた。
私を診たのは女医さん。この期に及んで、まだ入院を渋り続ける私を、「ほっといたら、死んでしまいますよ![]()
」と叱ってくれた。マスクで顔半分が隠れていたが、きっと若くて可憐な女性に違いない。若くて可憐な女性に叱られたら、素直に頷くしかないではないか。
入院を渋った理由は、ずっと幼い頃に猩紅熱にかかって以来、入院経験が久しくなくて怖いのが半分と、相部屋で他の患者と夜を過ごすことへの抵抗が半分。渋谷の他の映画館との団体旅行でも、相部屋の場合は不参加を貫いてきた。何故ならイビキがひどくて、眠れないに決まっているから。自分のイビキは聞こえないが、他人のは迷惑防止条例に違反しているとしか思えない。
予想に違わず、今回の入院でもイビキの大合唱。おまけに放屁の伴奏まで付いた。自分も眠りこけて、彼らを打ち負かせるくらいのイビキをかいてやろうと努めたが、結局のところ初日はまんじりともできずに朝を迎えた。
入院先で衰弱死してしまっては、お金を払っている意味がない
慌てて売店に駆け込み、735円もする耳栓を購入。レジのおばさんは、「交渉して、部屋を替えてもらいなさいな」と忠告してくれたが、入れ替わりの激しい病室で、静寂がキープされる保障はない。個室にチェンジできれば問題は解消するが、私のどこにそんな財力が!
入院中で気が紛れた唯一の物音は、同室の連中がどこぞの毛を剃り落される時に発するジョリジョリ音。手術前、若くて可憐な看護師の女性に処置されるわけだが、カーテンの陰ではどんな光景が繰り広げられているのだろう?
男の荒い鼻息が聞こえてきた。
「ウフフ、くすぐったいですか~? もう少し・・・もう少しですよォ
」という甘くささやくような看護師の声も聞こえてきた。
開腹手術未経験の私にとって、想像をたくましくして隠微に笑うしか、病中の楽しみはなかった。
そして、早々に自宅療養に替えてもらって一ヶ月余り、ようやく医者から「全然大丈夫
」の診断が出て、ギリギリセーフで1月26日公開の『全然大丈夫』初日に登板。
直前に職場復帰へ備えてのリハビリのため、電車に乗って立川の街に出向いてみた。寝っぱなしで足腰が弱ったのか、少々フラフラする。真冬の寒さも一際身に沁みる。
ちょうど伊勢丹で京都物産展が開催中だったので、逃げ込むように入ってみた。有名な老舗喫茶店のイノダコーヒーが出店しており、メニューに名高い〈ビーフカツサンド〉があった。かの池波正太郎が「男のサンドイッチ」と絶賛した逸品。一度は食べてみたかった。1,785円という値段は、私にとっては目玉が飛び出るくらい高いが、独りぼっちの快気祝いということで、〈アラビアの真珠〉なるシュガー&ミルク入りブレンドコーヒーとともに注文。特設テーブルで若くて可憐な女性達に挟まれつつ、ガブリと頬張った。
雑誌グラビアの写真等で見知っていたのは、血の滴るようなミディアムレアのカツなのだが、私の前に運ばれてきたものは、しっかり火が通っていた。ちょっとガッカリしたが、かえって病後には良いかもしれない。
分厚いカツサンドもコーヒーも美味しかった。暮れも正月もなく寝込んだ果ての憩いのひととき。悪い憑き物がストンと落ちた心持ちがして、「やれやれ」と息をついた。
↑添えられたベーコンもポイント高し♪


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