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2008-04-02

しあわせな孤独

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休日。世田谷文学館で開催中の『永井荷風のシングル・シンプルライフ』展へ行く。

この日は開館記念日ということで、入館無料。映画館という商売柄、休みづらい日曜日ではあったが、無料という抗し難い誘惑に負けた。

京王線の芦花公園駅で下車。冬の間、しばらく病床に臥せっていたせいもあって、通勤や近場へ映画を観に行くことを除き、外出するのは久々。もともと棒のように細かった脚は、更に退化して針金状態。春めいてきたので、せっせと歩き回って、萎えた脚を鍛えないと。

だが、この日は生憎と小雨混じりの寒空。せっかく咲き始めた桜の花びらも引っ込んでしまいそう。散歩日和には程遠かった。

荷風の『断腸亭日乗』は、私の枕頭の書。妻を娶らず、子供を持たず、敢えて独りで生きる悦びを綴ったこの日記には、同じく独身を通した小津安二郎監督を始め、熱狂的な愛読者が多い。同展には自筆の日記原本を始め、荷風のシンボルである下駄と蝙蝠傘の実物まで展示されていて、ファンとしては感涙にむせぶばかり。

見終えて、駅名の由来にもなっている蘆花恒春園立ち寄る。園内は春爛漫の花盛りというわけでもなく、寒さが身に染みる。ここは明治・大正の作家である徳富蘆花の住まいと庭だった場所。その随筆『自然と人生』の岩波文庫を、文学少年だった高校生の頃に表紙がボロボロになるまで読み込んだことを思い出した。遺品の並んだ展示館を覗いて、早々に引き返す。

そのまま帰るのもつまらないので、ネットの【芦花公園グルメ】からチョイスした店で昼食。アメリカ人で元フレンチのシェフが伊丹十三監督のラーメンウエスタン『タンポポ』に触発され、単身来日して開業した〈アイバンラーメン〉というところ。午後2時近かったが、長蛇の列。きっと評判の店なのだろう。

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昭和チックな商店街の入口というロケーションが良い↑

「並んでまで食べる気になれない」という言葉をよく聞くが、時間と気持ちの余裕があれば、並んで待つのも楽しいものだ。はたして荷風だったら、どうしただろうと考えてみる。若き日にアメリカとフランスで遊んだ彼のこと、持ち前の好奇心から並んででもここのラーメンを食べてみたのではないか。それに家族連れやカップルと一緒の列にいると、連帯感というか、不思議と世間とつながっているような暖かな気分になれる。孤独な散歩者として世間から遊離しがちだった荷風も、心和むひとときを求めて列に加わったのではないか。

30分以上も寒さに縮こまった揚句、ようやく食べることができたラーメンは、「亜米利加と仏蘭西の味がした」とだけ書いておく。

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〈塩全部のせラーメン〉で、千円也↑

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