(前回の続き)
昼過ぎに求職者一行を乗せた車は旅館へ到着。避暑地として知られた場所だが、今はシーズンオフで閑散としていた。
とてつもなくメルヘンチックな田舎↑
蕎麦屋とお城も共存↑
空腹だったが、昼食さえ提供されることもなく、直ちにオーナーによる面接、さらに小論文を書かされた。テーマは「温泉旅館の挑戦!」。私はかつての就業経験と専門的知識を駆使して、温泉場周辺のストリップ施設の重要性を説いたが、お座敷ストリップの意義について触れるのを失念した。いささか中途半端な点が、どう評価に反映されるのか不安だ。
その後、飲まず食わずのまま大浴場の清掃、宴会場の皿洗い、さらに各部屋の布団敷きの実技試験があった。全科目を終了した頃には、すっかり夜も更けていた。
私を含めた求職者12名には、暖房も布団もない六畳間一室のみあてがわれ、雑魚寝を強いられた。極端に人見知りするタイプの私は、初対面の中年男の集団(しかもライバル達)にどうしても馴染めず、疲労困憊ではあったが、怪獣ジョウゴンを伴って部屋から抜け出すと、宿泊客に紛れて〈天文台〉なる施設に逃げ込んだ。若くて可憐な女性インストラクターの説明を受けながら、天体望遠鏡で満天の星々を観察。だが、土星の輪や火星の運河にさえ心奪われることなく、過酷だった一日を振り返って深い溜息をついた。ああ、私の運命はどう転がってゆくのだろう? (続く)
(前回の続き)
採用試験の当日、求職者は朝10時に八王子駅南口へ集合させられた。それから旅館の車で現地へ直行。
同乗していたのは、いかにも温泉旅館の番頭さんに相応しい如才なさそうな中年男数名。私は彼らに打ち勝ち、この職を得る自信はなかった。
すっかり心細くなったが、今さら引き返すことも叶わない。せめて、わが友マンドラに慰めてもらおうと、傍らに置いたカバンを開けてみた。すると、中から見知らぬ小さな怪獣が顔をのぞかせたではないか!
この怪現象は、効率的な運営を常とする敏腕支配人の性分から、荷物になるのを回避すべく、軽便なミニサイズの怪獣に差し替えたことによるものではない。私の縮み上がった心情を敏感に察知したマンドラが、再び驚天動地のメタモルフォーゼを起こしたとしか言いようがない!
目の部分にかつての面影が↑
さっそく新怪獣をひっくり返して足の裏を見てみたが、名前は刻まれていなかった。私は現地に到着するまでの2時間余り、考えに考えてジョウゴンと命名。少年の頃に住んでいた団地の隣室の城後家の奥さんの顔と、大きく横に開いた口元の辺りがそっくりだったので。 (続く)
秋にシネクイントでレイトショー公開される『ヅラ刑事』が完成。初号試写のため、五反田へ出向いた。
感想を率直に書くと、実にくだらない映画。この場合、誉め言葉になるのだろうが。
最大の見せ場は、モト冬樹演じる禿頭刑事がウルトラセブンの必殺技〈アイスラッガー〉よろしく、颯爽とヅラを投げつけて悪人をバッタバッタと打ち倒すところ。これだけでも一見の価値が。
終わって、配給のT社の皆さんと酒宴。さっそく営業ご担当の美女おふたりにヅラ投げポーズを実演していただいた(映画業界を志望される方。配給会社の若手社員は、劇場側の過酷な要求に身を挺して応えなければならぬ義務があることを知っておくべし)。
セーノ、「アイヅラッガー!」 あれぇ、何も飛んでこないぞ?
T社のK氏とは『クイーン・コング』以来、久々のお付き合い。あれも実にくだらない映画だったが、悔しいかな、入りがサッパリ。「ふん、時代がついてこれなかっただけさ」とうそぶいて、自分を慰めた。
今は当時より、ゆるーいもの、どーでもいいものを受け入れられる土壌ができているような気が。ちょうど『クイーン・コング』公開の頃は9・11のテロの最中。今は深い諦念の溜息が逆に黒雲を吹き飛ばして、青空がのほほーんと広がった感じ? ともかくK氏とは捲土重来を誓い合う。
↑K氏は『ヅラ刑事』のレイトショーで興収1千万円突破を宣言!
ところで、前回に再会を果たした新生マンドラはどうなったかって? この夜も気づかれることなく、ずっと私の足元に控えていたのです。
ヅラで変装しているつもり↑
(前回の続き)
マンドラを探し求めて、今日も中野を徘徊。
空を飛べるようになった怪獣が潜伏していそうなところは何処か? 例えば空に近い場所、ビルの屋上は?
私は駅南口の〈丸井〉を訪れた。ここの屋上には、昔ながらの遊戯施設があるというので。
平日のためか、なかなか抜けきれぬ寒さのためか、人の姿はなかった。雨の降り出しそうな灰色の空の下、様々な遊具が時の流れから置き去りにされたみたいに、寂しくひしめき合っていた。
ここにもマンドラはいなかった。私は片隅のベンチに腰を降ろして、ぼんやりと陰鬱な空を見上げながら過ごした。誰とも口をきくこともなく、また一日が暮れていった。
宵闇の帳が下りると同時に、ぽつりぽつりと雨が降り出した。雨は次第に強くなり、ようやく我に返った私は、立ち上がると遊具の間を抜けてエレベーターへ急いだ。
その時、遊具のひとつに蠢く影を見た。「まさか!」と思って目を凝らすと、ああ、やはりマンドラではないか! 〈モグラたたきゲーム〉の上に覆い被さり、ボコボコに叩かれまくる毎日に怯えて、ブルブル震え続ける哀れなおもちゃのモグラ達を、魔の木槌から身体を張って守ってあげていたのだ!
しかも、皮膚の色が緑から青に変わっていた。カメレオンのような保護色の能力を身につけたか、パチンコで撃墜される恐怖に蒼ざめていたか、いずれかだった。 (続く)
↑このブログ、いろいろ物入りでお金がかかる!
(前回の続き)
青梅の駅前通りの和菓子屋に、〈名物シネマまんじゅう〉なる貼紙が。さっそく買い求め、おやつに食べたが、なかなかの美味。
ホームタウン青梅は映画看板だらけだったり、饅頭にまで「シネマ」を付けたりと、映画が町おこしの主役。
「映画館もないくせに、いかがなものか」と思ったこともあったが、最近は気にならない。映画館なんかなくたって、人は皆、瞳の奥にスクリーンを持っていて、ささやかな空想や懐かしい想い出を投影して愉しんでいるものだから。青梅の町おこしにおけるもう一本の柱が、「昭和の街」というセピア色のノスタルジーの領域なのも頷ける。 (続く)
↑ただしマンドラと私が過ごした日々はスクリーン上の幻影ではなく、あくまで真実!
(前回の続き)
地球防衛軍中東支部から、未確認生物学の世界的権威ムスタファ・アレレ博士が訪日。直ちにシネクイントを調査した結果、床のタイルの消失の原因は怪獣マンドラが食べ尽くしたことによるものと判明。行方不明のスタッフOについては、夢中でタイルを咀嚼中のマンドラが気を失って床に臥せっていた彼女まで、うっかり丸呑みしたからに違いないという驚くべき談話を発表した。
「しかし、何故、タイルなんか食べたのでしょう?」私は素朴な疑問を博士にぶつけた。
「腹が空いていたからです。怪獣にとってはタイルも鯛の刺身も同じこと」博士はそう断言すると、慌しく帰国していった。 (続く)
帝国ホテルのティーラウンジでくつろぐアレレ博士と通訳のボヤーン嬢。二人は宗教上の理由(?)で顔写真の掲載を頑なに拒んだ挙句、タバコに火をつけると巧みに煙幕を張った↑
(前回の続き)
息せき切ってシネクイントに到着した私の眼に飛び込んできたものは、まったく驚くべき光景だった!
何とシネクイントの床のタイルがそっくり消失し、コンクリートがむき出しになっているではないか! そして、私に連絡をくれたスタッフOの姿も、彼女が苦悶のうちに言い残した「怪獣」も消えていた。
↑ロビーはこんなだったのに・・・!
私は直ちにウルトラ警備隊へ通報。鍋島松涛公園の池で遭遇した巨大な影の件、さらにバンデラーからマンドラへの唐突な変更・・・いや、変容について、洗いざらい話した。
国会はシネクイントの休館を満場一致で議決。有識者を集めた、今回の怪現象の調査委員会も発足。俄かに日本列島を緊張が走った! (続く)
(前回の続き)
外見はマンドラになってしまったとはいえ、かつて私と篤い友情で結ばれたバンデラーと同一人物(怪物)に違いなかった。休日はいつもどおり一緒に図書館へ行き、私は借りる本を選び、彼はテーブルで静かに絵本を読んだ。
絵本の好みもバンデラーと同じ↑
図書館の天井からは、幾つもの紙細工の怪獣がぶら下がっていた。マンドラは嬉しそうにそれらを眺めていた。すると・・・!
突如、マンドラは ガルルルル~!! 雄叫びを上げるなり、 バリバリバリ-ン! 窓ガラスを突き破って飛翔したではないか!
「マンドラ! お-い、マンドラ!」
私の呼ぶ声が空しく響くばかりで、マンドラは遥か彼方へと飛び去っていった。紙細工の怪獣達の飛ぶ姿を見ているうちに、自らに備わる驚くべき飛行本能が目覚めたのだ!
しばらくして私の携帯電話が鳴った。シネクイントのスタッフOからだった。
「か、怪獣がシネクイントに・・・!」
「・・・何ぃ、怪獣?!」
「す、すぐ来て・・・ください・・・ウーン(ガクッ)」
スタッフOは、二度と答えることはなかった。
私は通勤定期があるのに、さらに500円もプラスして青梅特快より速い〈青梅ライナー東京行き〉に乗り込み、シネクイントへ駆けつけた。ああ、そこで私が見た光景は・・・。 (次回より、いよいよ『シネクイント危機一髪編』へ突入!)
バケツの下から現れた怪獣は、色こそ同じグリーンだが、形態はまったく別。少年の頃、怪獣博士の異名をとった私でさえ、その存在を知らない。しいて挙げれば、『ウルトラセブン』に登場した冷凍怪獣ガンダーのソフビ玩具のパチモン。
暗闇に長時間放置されたストレスにより、目の部分の変化が顕著だ↑
この驚くべきメタモルフォーゼの要因は、これ以上マルCなしで天下の東映の専属スター怪獣を使用し続けることに身の危険を感じた私の臆病心からくる方便によるものではない。長時間、独りぼっちでバケツに幽閉されていたバンデラーの恐怖心が成せる超常現象なのであった!
↑ちなみに20数年前の「シナリオ」誌に掲載された美青年時代の私。過労と貧困と恋の季節の終焉により、ある朝、目覚めたら哀れな中年男に変容していた・・・
私は恐る恐る怪獣の足をつかむと、エイヤっと裏返した。何とそこにはマンドラという、かろうじてバンデラーと似ていなくもない名前が刻まれていた! (続く)
マンドラ・・・ウーム、曼陀羅を想起させる格調の高いネーミングではないか↑
銀座で試写の後、歌舞伎座隣のYOUという喫茶店で同僚4人とランチ。この店の〈オムライス〉は美味しいと評判で、テレビや雑誌でもよく紹介されている。食べずに済ますのは、一生の損というもの。前夜、インターネットで場所も確認。もしも当日、別の店でのランチを提案する不遜な輩がいるなら、容赦なく怪星獣バンデラーの餌にするつもりだった。
ちなみにバンデラーはバケツを被せられ、さらに本の重石と出雲大社の護符までのせられて自室に軟禁中↑
幸いなことに誰一人として私に逆らう者もなく、すんなりYOUへ行けた。正午前だったので、並ばずにテーブルへ案内されたが、それからが長くて待つこと20分余り。期待と興奮と空腹がピークに達した時、ようやく念願の〈オムライス〉にご対面。
テレビで観たとおり、オムレツ部分はプルプルでフワフワ。中央からスプーンで裂くと、トロリと卵が広がる。口に運ぶと、濃厚な卵黄の味わいに加え、ほのかな生クリームの風味も。ウーム、とっても上品で美味しいが、かの池波正太郎なら「女子供の食い物」と一笑に付すかもしれない。卵の下のケチャップライス部分がごく少量なのも、その印象に輪をかけるばかり。「アフター5」という概念が確立していそうな銀座のOLならいざ知らず、渋谷の長時間労働者には腹持ちの点で問題が。事実、飢えたケダモノのような我々が一皿を平らげるのに要した時間は、たったの数秒。ドリンク込みとは言え、大枚千円の〈オムライス〉が、ほんの一瞬で咀嚼されてしまったのだ。
私の背後にいるバンデラーが怖いのか、バンデラーのことばかり執拗に書き続ける私の精神構造が怖いのか、同席した連中はハッキリとした言葉で非難こそしてこなかった。だが、引き攣った唇の端に君臨しているトマトケチャップの残滓が、量と私の選択眼への真っ赤に燃え上がる不満と憎悪を物語っていた!
帰り道、銀座グルメ通のスタッフTが「ここは美味しい」「あそこも美味しい」とあちこちの店を指し示した。私は敗北感に打ちひしがれ、持っていた傘をギュギューッ!と握り締めた途端、あれま、メリメリと柄が割れてしまったではないか!
↑ああ、愛用の〈青空の傘〉があえなくオシャカに・・・
何だか悪い予感に襲われ、「ちょっと用事があるから!」と言い捨てるなり、私は午後からのスケジュールをすべて反故にして、そのまま銀座から青梅の自室に直行。バケツをどかすと、そこには・・・恐るべき進化を遂げたバンデラーの姿があった。 (続く)
↑こんな怪獣、知らないぞ!
(前回の続きの予定でしたが・・・)
都合により、「大怪獣 松涛に現わる?!」シリーズを中断いたします。
アクセス数がジリ貧だとか、「内容的に問題だらけ」との判断で上層部による終了勧告があったとか言うわけではありません。
実は肝心の主役、バンデラーが行方不明に!
私がどこかに置き忘れただけですが・・・。
一応、心当たりがありますので、明日にでも捜索活動を開始します。
本人が自分から戻ってきてくれると嬉しいのですが、彼の性格上、私が迎えに来るのをメソメソ待っているものと思われます。
すぐにでも駆けつけ、抱きしめてあげたいのはやまやまですが、周りのスタッフが身動き取れないくらい忙しそうに働いているので、私まで忙しいフリをしなければならず、シネクイントを離れることができません・・・。
もしも先に見つけてくださった方は、ご一報くださいませ。バンデラーの足型色紙をお礼にプレゼントいたします(私のサイン&キスマーク入りさ♪)。
とにかく発見でき次第、 “人類の存亡に関わる” この驚異のドキュメントを再開いたします。 (きっと続く)
(前回の続き)
昨日一日のアクセス数は37件。多少は回復したが、先週までの件数には遠く及ばぬ低空飛行。このブログの社会的信用も権威も名声も、いとも簡単に失墜してしまった。この際、「東急本店横にある立ち食いの箱根そばで飼育されていた〈あんこう唐揚げそば・うどん〉用の鮟鱇が水槽から飛び出し、道路をピチャピチャ跳ねながら公園の池に逃げ込み、そのまま突然変異を遂げたのでは?」程度の穏便な説に止めて置けばよかった。
食べてみたが、唐揚げはニンニク風味がきつく、しかも店頭ポスターより小振り↑
しかし、「あの不気味な影は、怪星獣バンデラーでは?」という説を打ち出してしまった以上、引っ込みがつかない、と言うか、すっかりその気になってしまった。そして、自作の絵をためつすがめつ眺めているうちに、ますます私の見た影はバンデラー以外の何者でもないと確信するに至った。重罪で服役中の者が、極刑を恐れるあまり、己は無実という思い込みに逃避して、本当に無実のヒーロー、モンテ・クリスト伯のつもりになってしまう現象に近いのかもしれない。 (まだまだ続く)
↑色鉛筆で塗ったら、チョーかっこよくなった♪
(前回の続き)
この日記のアクセス数が激減している。昨日一日で21件。先週までは、連日200~300件をキープしてきたのに。来訪者がいなくなるのも時間の問題。
この凋落ぶりは、私の書き続けている公園の池における驚天動地の目撃談が、世間的に受け入れ難いからに違いない。少なくとも現在上映中の『B型の彼氏』を観に来てくださった韓流ファンの女性の皆様からは、自らの趣味嗜好とは無縁、かつ主演のイ・ドンゴン氏の写真が掲載される可能性さえなくなったと、一斉にそっぽを向かれてしまった感が。(フッフッフッ・・・実は私のケータイの中には、氏の来館時の未公開写真を保存してあるのだ。あんまり冷たくすると、蔵出しせずに消去しちゃうから・・・)
しかし、このままアクセス日照りが続いたとしても、真相を探求する私の姿勢は変わらない。怪現象の第一遭遇者は、世の無理解に晒されるのが定石。昨晩、DVDで鑑賞した『ウルトラQ』にも、怪獣の存在を大人達に進言する少年のエピソードがあった。「ホラふくでねぇ!」と大人達は、少年を一蹴。だが、古代怪獣ゴメスは出現。大人達は逃げ惑うばかり。結局、その子の知恵で別の原始怪鳥リトラが孵化。リトラはゴメスを打ち倒し、人類の危機は回避されるという感涙むせぶ物語だった。テレビや映画でなくとも、人外魔境を覗いてしまった者は、その瞬間から殉教者の運命を担わなければならないのだ!
これを期に読者をフルイにかけよう。そして、私を信じてどこまでも読み続けてくださる方と共に、人類の危機を救うべく、昼夜交替で池を監視しよう!
さて、あの不気味な影のお話の続き。ワニでもミスタークエスチョンでもないとしたら、何なのだろう? 回りくどい表現はやめて、単刀直入に書こう。少年時代に怪獣博士の異名をとった私があの形状から想起するものは、『キャプテンウルトラ』に登場した怪星獣バンデラーだ。
たしか、こんな怪獣だった↑
小学生の頃、リクエストに応じてどんな怪獣でも描くことができた。その特技のおかげで、クラスのごく一部では人気者だった。40年近く経った今も、バンデラーをチョチョイのチョイでそれらしく描けるなんて! この特技を生かせるような「たつきの道」が、この世に存在しなかったことが残念でならない。 (まだ続く)
↑あの影の形状と酷似しているのでは?